関西デザイン経営推進事業 成果発表
2023.03.13
デザイン・ブランディング/志波大輔
2023年が始まって2ヶ月が過ぎて3月になりました。
日に日に暖かくなり、気持ちも高揚してきますね。
先日、近畿経済産業局が主催する「関西デザイン経営推進事業(以下本事業)成果発表」にて登壇させていただきました。
本事業は、デザイン経営を導入する企業を関西で増やして行こうというもので、本年度で2回目の開催だそうです。株式会社SASIの近藤清人代表が総合プロデューサー兼、クリエイティブディレクターとして運営され、弊社はアートディレクションとデザインの部分で携わらせていただいています。
近藤代表とは大阪デザインセンターさんのセミナーでご縁をいただき、今回の参画に至りました。
このデザイン経営とは2018年に経済産業省・特許庁が「デザイン経営宣言」を公表し、日本の経営スタイルの変革を狙ったものです。
以下その宣言文から概略を引用します。
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日本は人口・労働力の減少局面を迎え、世界のメイン市場としての地位を失った。
さらに、第四次産業革命により、あらゆる産業が新技術の荒波を受け、従来の常識や経験が通用しない大変革を迎えようとしている。
そこで生き残るためには、顧客に真に必要とされる存在に生まれ変わらなければならない。
-中略-
デザインは、企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営みである。
それは、個々の製品の外見を好感度の高いものにするだけではない。
顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を 徹底させ、それが一貫したメッセージとして伝わることで、他の企業では代 替できないと顧客が思うブランド価値が生まれる。
さらに、デザインは、イノベーションを実現する力になる。なぜか。
デザインは、人々が気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく営みでもあるからだ。
供給側の思い込 みを排除し、対象に影響を与えないように観察する。
そうして気づいた潜在的なニーズを、企業の価値と意志に照らし合わせる。誰のために何をしたいのかという原点に立ち返ることで、既存の事業に縛られずに、事業化を構想 できる。
このようなデザインを活用した経営手法を「デザイン経営 」と呼び、それを推進することが研究会からの提言である。
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デザインと聞くと、おそらく多くの方は、ロゴやウェブサイトを作ったりする狭義の意味で捉えられるかと思いますが、ここでは事業や企業自体をデザインしていく広義の意味で用いられています。
そして、この宣言文ではデザイン経営への入り口には9つあると述べられています。
SASIさんはこの中で「アイデンディティ」を入り口とし独自の「アイデンディティ型デザイン経営」という手法で事業を推進されています。
文字通り、事業の代表者のアイデンディティを紐解き、なぜ事業を行っているのか?(why)、そこからどのような未来を描き(what)、どのように実現するのか(how)を言語化、視覚化、具体化をしていきます。
僕もこれには同感で、他の8個から入るのは非常にハードルが高い(というか答えを導き出しにくい)ように感じます。
また、提言文の最後に「誰のために何をしたいのかという原点に立ち返ることで」とありますが、この原点こそアイデンディティそのものです。
本事業においては、数回に渡るセッションで代表者のアイデンディティを抽出していきました。
一見事業と関係ないのでは?というような幼少期の話などに会話がジャンプしたり、とにかく多角的なアプローチでその「人」を浮き彫りにしていくイメージです。
当然ながらヒアリングする側に非常に高度なテクニックが求められ、常に頭の中で立体的パズルを解いてるような感覚になりました。
我々が取り組んでいるブランディングとの大きな違いは、ここから具体的な商品やサービスの開発(=デザイン経営宣言で言うところのイノベーション)まで行うところです。
上図にあるように、僕はアイデンディティの大きな役割は、未来のありたい姿(=ビジョン)を描くことだと思っています。
この未来と現在とのギャップが「問題」として顕在化し、それを解決するための施策(=コンセプト)、すなわち商品やサービスがビジネスを加速させていく武器となるわけです。
昨今はこの「問題」が枯渇しているので、どの会社もこぞってビジョンやパーパスを策定しているのも合点がいきます。
ですがいきなり、”さぁ、あなたの会社はどんなビジョンを描きますか!?”と言われてもピンとこないと思いますし、仮にビジョンを描いても、それが根っこの部分(=アイデンディティ)とかけ離れていては到底なし得ない、絵に描いた餅になっておしまいです。
だからこそ、このアイデンディティを入り口とした手法に価値があるのではないでしょうか。
今回弊社が伴走させてもらったのは、同じ堺市にある進和建設工業株式会社様でした。
ここでは詳しいことはお話を出せませんが、アイデンディティに則した素晴らしいビジョンと施策の種ができたと思います。
日々の業務に追われる中、「なぜ自分が事業をしているのか?」「どんな未来に向かって走っているのか」などを考える機会は多くないかもしれません。
もうすぐ訪れる春空の下、自身を振り返る機会をつくってみてはいかがでしょうか。