なぜ今「認識をそろえる」が必要なのか?

2026.07.17

日々のこと/志波大輔

こんにちは、志波です。

先日、お客さんとの打ち合わせの中で、「人材定着を支援するサービス」の話題になりました。社員が長く活躍できる組織づくりをサポートするものや、理念浸透、社内コミュニケーションを支援するサービスなど、最近は本当にさまざまなサービスがあります。

その話を聞きながら、ふと疑問が湧いたんです。
「数年前、数十年前って、こんなサービスがなくても会社は回っていたよな。」
もちろん、昔の会社にも人材定着の課題はあったと思います。でも今ほど、「認識をそろえること」そのものがサービスとして成立している時代ではありませんでした。

じゃあ、なぜ今になって、これほどまでに必要とされるようになったのでしょうか。少し考えてみると、その理由はITが進化したからではなく、働き方や組織のあり方そのものが大きく変わったからなんじゃないかと思いました。

まず誤解してはいけないのは、昔の会社に「認識をそろえる」という考え方がなかったわけではないということです。むしろ、今以上に自然と認識はそろっていたのかもしれません。
ただ、その方法が違いました。

毎朝同じ場所に集まり、同じ時間を過ごし、隣の席で仕事をする。休憩時間には雑談をし、仕事終わりには飲みに行く。社長や先輩が何を大切にしているのか、どんな判断をする人なのかを、日々の仕事や何気ない会話の中で自然と感じ取ることができました。
つまり、「言葉」で伝えていたというより、「空気」で伝わっていたんです。

ところが今はどうでしょう。リモートワーク、チャット、オンライン会議、副業、業務委託、外部パートナー。働き方は柔軟になりましたが、一緒に過ごす時間は確実に減りました。

便利にはなった一方で、「この会社は何を大切にしているのか」を肌で感じる機会は少なくなっています。以前なら空気で伝わっていたことが、今は意識して言葉にしなければ伝わらない。
だから、「認識をそろえる」ということ自体を、仕組みとして設計する必要が出てきたんだと思います。

さらに、仕事の内容も昔とは大きく変わりました。
営業、デザイナー、マーケター、エンジニア、SNS担当、AI担当。一つの会社の中に、さまざまな専門性を持った人が集まっています。営業には営業の正しさがあり、デザイナーにはデザイナーの正しさがある。どれも間違っていません。

でも、「私たちは何のために存在する会社なのか」という共通の軸がなければ、それぞれが自分の正しさだけを追い求める組織になってしまいます。
だからこそ、理念やビジョン、ミッションやバリューが、これまで以上に重要になってきているんじゃないでしょうか。そして、これからはAIもその流れをさらに加速させると思っています。

AIは会社の知識を学習できますが、「なんとなく」「昔からそうしている」といった暗黙知までは理解できません。会社の考え方や判断基準が言葉として整理されていて初めて、AIも本当の意味で力を発揮できます。認識をそろえるということは、人のためだけではなく、AIと共に働くための準備でもあるのかもしれません。

ただ、どれだけ便利なツールを導入しても、それだけで組織が良くなるわけではありません。
本当に共有すべきなのは「情報」ではなく、「判断基準」や「価値観」です。

何を大切にしている会社なのか。
どんな時にYESと言い、どんな時にNOと言うのか。
そこが共有されて初めて、組織は同じ方向を向いて進んでいけるのだと思います。

この記事を書きながら、一番考えさせられたのは僕自身でした。
経営者って、自分の頭の中では全部つながっているんですよね。
「前にも話したし。」
「ここまで説明しなくても分かるだろう。」
そんなふうに思ってしまうことがあります。

しかも僕自身、昔から1から10まで細かく指示されたり、説明されたりするのがあまり好きではないタイプです。だから、自分もつい多くを語らず、「きっと伝わるだろう」と思ってしまう。さらに僕は、相手の言葉だけではなく、その場の空気や表情、言葉にしていない雰囲気みたいなものを感じ取りながら判断することが多い人間です。

「たぶんこう思っているんだろうな。」
「こうしてほしいんだろうな。」
そんなふうに、言葉の奥を読みながら動くことが多いので、それが自分の中では当たり前になっています。でも、よく考えると、それは僕の感覚であって、相手も同じように感じ取れるとは限りません。

むしろ、「伝えたつもり」「分かってくれているはず」という思い込みこそが、一番大きなコミュニケーションエラーを生んでしまうのかもしれません。だからこそ、理念やビジョンをつくること以上に、それを何度も対話し、日々の判断や行動を通して伝え続けることが大切なんだと思います。

便利なツールが増えた今だからこそ、最後に必要なのは、やっぱり人と人とのコミュニケーションです。ツールに頼ることももちろん大切ですが、それ以上に、自分自身が「伝えたつもり」で終わらせないこと。

11期目を迎えた今、社員とのコミュニケーションエラーが起きないよう、僕自身ももっと丁寧に言葉を重ね、想いや判断基準を伝え続けられる経営者でありたいと思います。